
『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読み解こう! シリーズ ⑤
国連憲章の「敵国条項」の敵国は日本
「もし米軍が撤退したら、日本はすでに相当な能力をもつ軍事力をさらに強化するだろう。だれも日本の再軍備を望んでいない。だから在日米軍は日本の軍国主義化を防くためのピンのふたなのだ」
在日米璽海兵隊司令官ヘンリー・C・スタックポール少将のワシントンポスト紙上の発言よリ
引用・参考:
日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか(矢部 宏治)

国連の本質は第2次大戦戦勝国連合
日本は第二次世界大戦における敗戦国です。世界の最底辺国に転落した状況のなか、戦後世界の
覇者アメリカヘの徹底した従属路線をとることで、その直後に勃発した冷戦における戦勝国へと駆け
上がっていきました。
戦後70年たった今では、200近い国々が加盟する国連のなかで、日本は予算の10%を一ヵ国で負担しています。ところが、国際法の最上位の国連憲章のなかには「敵国条項」というものがあり、その「敵国」とは第二次世界大戦の敗戦国である日本やドイツを指しているのです。
この「敵国条項」は現在でも削除されていません。
なぜ沖縄がいまだに米軍の軍事占領状態にあり、本土でも首都圏の上空全体が米軍に支配されて
日本の飛行機はそこを飛べないという異常な状態が続いているのでしょうか。
もともと、日本に降伏を勧告したポツダム宣言では、「占領の目的が達成され,日本国民自身が選んだ平和的な傾向をもつ政府が成立したら、占領軍はただちに撤退する」と明記されていました。これは、大西洋憲章(イギリス・アメリカ共同宣言)で、「領土不拡大の原則」を宣言して国々をまとめあげて戦争に勝利した以上、当然の内容でした。
1952年に発効したサンフランシスコ講和条約にも「連合国のすべての占領軍は、この条約の効力が発生した後すみやかに、いかなる場合にも90日以内に日本から撤退しなければならない」と書かれていました。
ところが,アメリカによる軍事占領状態は継続。それは、条文の後ろに「ただし、この条文の規定は、
二国間で結ばれた協定( =日米安保条約)による外国軍(=米軍)の駐留を妨げるものではない」という例外をつくるトリックがしかけられていたからです。
同じく「領土不拡大」という大原則のかげで、なぜ「沖縄本島の軍事基地化」という酷い国際法違反が可能になったのか。それもやはリサンフランシスコ講和条約の第3条に同じようなトリックがしかけ
られていたからです。この条文の前半には「日本はアメリカが国連に対して沖縄や小笠原などを信託統治制度の下に置くと提案した場合、無条件でそれに同意する」と書かれています。信託統治制度というのは国連憲章で定められた制度なので、領土不拡大の原則にもとづいています。国連の管轄のもとに、将来の独立や自治を前提として統治することが原則なのです。ところが、条約の後半には「しかし、そうした提案が行われるまで、アメリカは島や住民に対し、行政・立法・司法上の全ての権力を行使する権利をもつ」という内容が書かれていました。
結局アメリカは、沖縄の本土復帰まで一度も「そうした提案」をしなかったのです。いかにも信託統治を開始するまでの期間だけ沖縄の三権をすべて握るとい形をとりながら、実際は信託統治を開始せず独裁的に支配できる期間を無期限に延長したわけです。
これらのトリックは完全に大西洋憲章や国連憲章の大原則に反しています。なぜアメリカ以外の連合
国諸国は国際法違反に反対しなかったのでしょう。
その笞えこそがまさに「敵国条項」なのです。
国連憲章は、「武力行使の原則的禁止」「主権平等」「民族自決」「人権の尊重」などさまざまな理想主義的条項を定めています。ところが「敵国」に対する戦後処理については、そうした条須はすべて適用除外になるということなのです。
沖縄で米軍機はアメリカ人の家の上は避けて飛び日本人の家の上では危険な低空飛行をしているなどの沖縄や本土での人々を苦しめている不条理、つまリ航空法など「人権条項の適用除外」の源流は、国連憲章の107条による「国連憲章すべての適用除外」にあったのです。
日米安保条約とは、「日本という国」の平和と安全のためではなく、「日本という地域」の平和と安全のために結ばれたものであり、その地域で最も「攻撃的な脅威」となる可能性が高いと想定されていたのは、当の日本国なのです。「同盟国&属国」というよリ「同盟国&潜在的敵国」だったのです。
シリーズ①はこちら シリーズ②はこちら シリーズ③はこちら シリーズ④はこちら
参考
敵国条項 - Wikipedia
国連憲章『旧敵国条項』の問題点 - 国士舘大学 学術情報リポジトリ

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